野球部物語 13

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  夏合宿が終わると、2学期から自主練習とは名ばかりで、サボる部員が多くなった。それでも2年生は今度は我々の番だと張り切ってグランドに立っていた。
 工夫しながら、順調に行っていた野球部に激震が入った。足も速く、運動センス抜群、走攻守揃ったW.S君が、熊本市内に引っ越すと退部を申し出て来た。
 彼は私の一番の理解者であり、仲間である。「それはないだろう、引っ越しを延ばす訳にはいかないのか」と、本気に思ったりした。
 家庭の事情では、なすすべはなく、どうしようもない。野球部としては本当に痛い。田舎で家族が引っ越すことはほとんどない。めったにない事が起こったのだ。
 一度あることは二度ある。今度は、W.K、K.I君が退部を申しでた。W.K君の親が直接、監督と私に説明に来た。
 「野球に熱中し、猛練習で疲れ、成績不振、このままでは希望校に進学できない」と、真剣な眼差しで訴えてこられた。のほほーんと過ごしていた私には驚きであった。将来のことが身近に感じられた。    つづく