ひおのはし


  96歳の山友が菊池渓谷に行きたいとこぼしている。昨年までは熊本一、いや日本一元気だとわれわれ仲間は誇りに思っていた。 家族は良かれと思ってデイケアセンターに申し込み、喜んで通所していらっしゃる。話題豊富、習字はプロ級、人間性も豊かだ。デイケアセンターで人気者である。    

 デイケアセンターは年寄りにやさしい。先回りして痒いところまで手が届く。年寄りはうれしく快適な空間を満喫する。すべてスタッフに任せてしまう。優しさは年寄りの足腰を弱くする。 デイケアセンターに通所して、足腰がよわってしまうのは、年寄りを大事にするからだ。菊池渓谷は90歳を超した高齢者には過酷だ。

 高齢者に無理だと諭すのは可哀想であるが、迎合するのが本当の親切だろうか。冥途のの土産にとは言いすぎだが、菊池渓谷を散策したいのだろう。気持ちが重々わかる。 私もすぐ山友の心境に近づく、優しくしなければ罰が当たる。今日の下見は山友に印籠を与えなければならない。90歳の三浦雄一郎はみんなの支えで富士山頂に立てた。菊池渓谷の自然はすばらしい。