76歳の日記

 私は今年76歳の誕生日を迎えた。沢木さんの旅のエッセイに憧れ、四国遍路に挑戦した。60歳であった。見知らぬ土地で眠れぬ夜を過ごしたこともあった。一晩中続いた強風、屋根を叩く雨音をまんじりともせず淋しさを紛らわしていた。
60歳はもう十分年齢を重ねているが、今、思うと気力と体力も充実していた。糖尿病、前立腺を患っていたが、薬を服用し、体調はすぐれないことはなかった。

 60日間一人で旅することは、人生を振り返るのに十分な時間であった。人気がない山中で迷ったり、怖い思いはしたが、自分で決めたコースを黙々と辿った。
遍路の旅で何を得たのかと尋ねられるが、今もあの遍路の旅は、「何だったのか」結論は出ていない。つたない日記ではあるが、私の生きている喜びを一日400字記したいと旅の途中決意したことはほのかに覚えている。

 遍路から16年経つが、買い物、庭木の剪定、こまごました日常が、簡単にこなすことが出来なくなった。全力で立ち向かわなければ一人前に振舞えない。
人はいつか人生の終焉を迎える。生まれるときも一人、死ぬ時も一人、そう覚悟を決めれば、自分の人生に慈しむ心が湧いてくる。