モグラ打ち

 「14日モグラ打ち、餅やらんもんは、ケチンボ」と囃しながら各家々を回っていた。モグラ打ちは、8軒しかない集落の子供が主役の風習であった。
竹の先に藁を巻き付けて、モグラが退散するように地面をたたく。モグラは農家の敵、大事な作物の根を食い荒らす、憎っくき敵なのである。

 私が小学生のころ、山間地は冬休みは12月25日から1月25日までであった。モグラ打ち(14日)、どんどんや(15日)は当然学校は休みで、担い手の子供の出番である。
モグラ打ちで各家々を回ると、お菓子、ミカン、それにお年玉を用意して振舞ってくれた。農家も、「ケチンボ」と言われたくないのか、こぞって歓待してくれた。

 そんな風習も、子供の数も減り、冬休みも1月10日までになり、モグラ打ちの行事もすたれてしまった。それに成人の日も毎年変わる。
どんど焼きモグラ打ち」担い手のいない風習は廃れ行く運命にある。のんびりした、おおらかな風習は人間の心を暖かくする。私のノスタルジーかも知れない。