虫の音

七滝

 8月は今日で終わり。早起きして玄関を開けると雨が舞っている。昨日は騒がしく鳴いていた秋の虫の音は止んで静かな朝を迎えた。小雨でも虫は動かなくなるのだろう。
秋とは名ばかりで毎日うんざりするような暑さだ。しかし虫たちは季節を知らせてくれる。虫の音でコオロギ、クツワムシ、スズムシと聞き分けていたが何の虫の音かわからない。自然が遠くなっている。
 
 虫の音が雑音に聞こえるようでは、私の感受性も地に落ちたものだ。山に登ったり、カラオケで大声を出したり、喜びも悲しみも一緒だった友人が不慮の事故で死の境をさまよっている。
山友から一報を受けたとき我が耳を疑った。しばらくして涙がとめどなく頬を濡らした。人はいつか死ぬのだが、あまりに突然で、どう心をもっていくか動揺した。悲しみや寂しさが押し寄せた。

 明日から、当たり前であるが9月である。先月は同級生を失い、今月は友人を見送ろうとしている。だんだん日が暮れるのも早くなり秋本番を迎える。
ただでさえ、わびしい感傷的な気分になるのに、次つぎと別れが続いている。感受性が麻痺している私だが、麻痺していて良かったかもしれない。