ハンチバック

 「ハンチバック」の著者市川沙央さんは障害者である。難病を患って車椅子が離せない。障害者が書く小説は差別語らしき言葉でも、自ら障害者なので、差別には該当しない。
自ら私は「せむし」ですと告白している。自ら告白したら差別にならないか心配する。芥川賞受賞作「ハンチバック」の日本語訳は、「せむし」である。

 小説家は、ある事ない事、経験したこと事、してない事、面白おかしく書かなければ作家になれない。身内が顔をそむけるような、寝物語も躊躇しては真実には迫れない。
芥川賞受賞作を読んだ父親が顔を赤らめた。「破廉恥でエロい」と激怒されたらしい。市川さんのエロさを、父親に知られるのは照れ臭く穴があったら入りたい心境であったろう。

 「ハンチバック」を読み始めたら、軽妙なタッチで読みやすい。暗いテーマだが、その文体はとても経験していないとかけない破廉恥内容である。
しかし、いやらしくもなくとても明るい。隠すことは何もない。難病を患っているが我々に生きる希望を与えてくれる。何が異常で何が正常か、垣根を取っ払いたい気持ちにさせる。