香り


 高森の街を散策すると寺の境内からプーンといい香りが伝わってきた。掃除の行き届いて、瀟洒な寺は西蓮寺とパンフレットに載っている。
坊守さんに断わって境内を見学させてもらった。境内に目が行ったのは、銀木星と金木星の大木であった。「銀木星は香りがあまりしません」。匂いの主は隣に生えている金木星であった。

 植物が醸し出す香りは、自然界の匂いであり、上品な香りである。街並みに溶け込んで、鐘の音とともに、時間と季節をお教えてくれる。のどかな風景である。
田舎町は人口減少が止まらない。奇麗に手入れされた庭は気持ちがいいものである、空き家の荒れたはてたたたずまいを観ると生きた街の匂いはしない。

 スーパーで買い物おかえり、自転車に乗った若者とすれ違った。頭がクラクラするような激しい臭いだ。整髪料か、香水か、すれ違うだけで鼻を突く臭いだ。
香水は気分を晴れやかに、すっきり、落ち着かせるために使うのであり、顔を背けるようでは元も子もない。