ふたりのマエストロ

ミュージック映画は、内容はともかく、音楽シーンがすばらしい。オーケストラ演奏は迫力があり、それだけでも価値があり、満足する。音楽オンチの私は、画面から音楽のすばらしさを受け取る。 音楽と接するだけで自分にない世界に誘い込まれる。気分がすぐれない、落ち込んでいたりする時にミュージック映画に何度勇気づけただろうか。  

「二人のマエストロ」は、音楽の持つ素晴らしさだけを、描いた映画でない。どこにでもある人間社会の確執を芸術一家にスポットを当てて、真実に迫ろうとしている。人間ドラマに仕上がっている。 あらすじだけをなぞろうとしては、この映画の本質にはたどり着けない。父と息子、嫁と姑、古くて新しい問題だが、分かり合えることはない。  

 父は衰え、息子は成長する。息子は成長して父を超える日がやってくる。それが人間社会の常だ。我が子の成長を喜ばない親はいない。 息子はいつまでも息子でいて欲しいが、そうはいかない。息子から励まされ、諭され親父の面目はない。太陽は沈む。しかしまた太陽は昇る。朝の来ない夜はない。息子よ頑張れ!!