告別式

I君の葬儀は12時に始まる。午前中時間があるので、ゆっくり構えていた。靴下、ハンカチ、ワイシャツ、礼服、全て揃っている。クリーニングしているので完璧だ。
独り身には全て自分で確かめ、確認しないといけない。慶弔式には特に失礼があってはいけないので、気を使う。

葬儀場には何回も行ったはずなのに、ハッキリしない。余裕を持って行ったはずなのに、案の定道を間違えた。式に間に合ったが、方向オンチになったのか情けない。
式場について、あたりを見回したら遺影の前で大粒の涙を流している高齢者がいる。誰だろうかと覗くと、同級生Mではないか。

話さなくても同じ心情である。こちらももらい泣きしてしまった。歳とると涙もろくなる。涙は人前で流すものでないと教えを受けてきたが、どうでもよくなった。
最愛の夫を失って憔悴した車いすの夫人の姿が目に焼き付いた。車いすは何かと不自由である。今から一人でしなければならない。幸せに暮らしてもらいたい。