飽和潜水

知床半島沖で観光船が沈没して2週間経つた。厳寒の海に投げ出されたら命は30分もたないと言われている。家族には残酷だが絶望である。
家族や親族は遺体が発見されるまでは、万が一生きている望みを捨てない。肉親であればその心は十分理解できる。生死の決着を早くつけないと悲しみは続く。

観光船は水深120mの深海に横たわっている。我々が暮らしている地上は1気圧だが、120mの深海は12気圧になる。
高圧の深海で作業となると、命の危険が伴う。私は、8m潜った経験が有るが、とてもじゃないけど、まともな判断が出来る状況でない。耳はガンガンするし、暗闇だ。

鹿児島から駆け付けた特殊技術を持つサルベージ会社が調査を開始した。水中カメラを駆使して不明の乗客を探すと言う。
120mの深海の環境と同じ状態にして、体を慣らして作業にとりかかる。「飽和潜水」、と言う言葉を始めて知った。色んな仕事があるものだ。地味だがなくてはならない仕事である。