母の日

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   一人娘の母は我がままだった。養子に来た親父は大人しかったので、我が家は平穏無事に暮らせたのだろう。
 3世代同居の大家族で育った私は、祖母にべったり、母に手を焼かせた思いはあまりない。
 私が上京するとき、熊本駅に見送りの時母は、「行ってらっしゃい」とあっさりしたものだった。汽車での見送りは、悲しい涙の別れと聞いていたので拍子抜けであった。
 田舎で家付きの母は、九州から出たことがなかった。家族旅行など無縁の生活だった。自分の息子は東京や大阪に旅立たせたのに、家が一番の人であった。
 そんな母が、私の卒業式に上京し「出席したい」と、我が耳を疑った。歳とった母を友達に紹介するのが、恥ずかしかったが、受け入れた。
 あっけらかんの母が、自分勝手な生き方を許してくれた。母への感謝と自省の念しか浮かばない。
 卒業式後、東京見物、新幹線、大阪万博、母と一緒に回ったことが、唯一の親孝行と呼べるのかもしれない。